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 この船については、既に含水液状化物質を積載した場合のGZ曲線が計算されている。出港状態において比重2の貨物を載貨重量の約80%積載した場合、自由表面影響を考慮すれば、GZが最大となる横傾斜角は20度より小さく、GZ曲線の0度〜30度の面積は、上記基準(A.167-a)の約60%となる。これは、主として乾舷が小さいことに起因していると考えられる。この船の例からは、IMOの勧告ベースの基準を適用した場合、非常に厳しいものとなると言える。
 以上により、A.167を満たすには、相当程度の乾舷が必要であり、これを内航船に適用するのは、一考を要することが分かる。逆に、貨物の積載量によっては、こうした厳しい基準でも満たせる可能性はあるが、運航実務の観点からは、効率が悪いことは否めない。

 

3.6.3. 含水液状化物質運搬船の復原性の試計算
(1)試計算の目的
 概略の検討からも、IMOの勧告ベースの基準を、そのままの形で内航船舶に適用するのは問題があると考えられるが、SOLAS条約第?章の改正に合わせて、含水液状化物質の復原性要件を多くの国が定める可能性もある。そのため、含水液状化物質による自由表面影響を正しく考慮した復原性基準を検討することは有意義である。
 復原性基準の検討の基礎としては、まず、我が国が含水液状化物質運搬船として認可している船について、IMO基準に準拠した場合に、その復原性はどの程度のものであるか、資料を得る必要がある。本試計算は、こうした復原性に関する資料を得ることを目的とする。

 

(2)試計算の概要
 試計算に際しては、その概略のスペックを船舶技術研究所が決定し、日本海事協会の御厚意により復原性計算を実施していただいた。また、関係船会社からは、船舶備え付けの復原性資料を含む、図面等を提供していただいた。
 試計算の結果を一言で表すと、「現在の内航含水液状化物質運搬船にとって、貨物を "Heavy Liquid Cargo" と見なしてその自由表面影響を考慮することは、復原性要件としては厳しいものであり、簡単には満たすことができない」というものである。但し、この試計算結果は、過去の運航実績に基づく我が国の規則の適否を論ずるものでは無く、将来的な課題を明らかにするためのものである点に留意されたい。

 

 

 

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